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英語学習

Learning

英文学科/他学部の学生さんに

数年前のある経験がきっかけで気づいたことがある。以来、僕は英文学科の学生さんにこんなことを繰り返し述べてきた。

 英文学科や英語学科の学生さんが、一番「英語を生かした職業」に就きにくいということである。(中学や高校や塾の教師は除く)

 なぜか?英語は言葉。つまり、自分の心や頭の中身を相手に伝えるための単なる道具にしかすぎない。とすれば、伝えようとする心や頭の中身がなければ英語 など根本から役立たない。英文学科の学生さんは、「将来は英語を使った職業に」とか「翻訳家に」と考えているひとが大変多い。それはそれで結構だが、例え ば就職面接で「じゃあ、あなたのもっている専門知識は何ですか?」と尋ねられたらどうするのか?「英語です」では答えにはならない。英語はただの道具。そ れをどのように使うのかが問題だ。就職となれば、少なくともその筋の専門性をある程度求められる。英語は話せる。しかし、ビジネス(国際的ビジネスマン) や歴史(ガイド)といった知識について「ちょっと知っている程度」では、給料をもらう身として何を英語で話すというのか?

 翻訳や通訳の世界でさえ、専門に分かれている。政治の通訳、スポーツの通訳、フラワーコーディネーターの通訳、酒の翻訳、TVゲームの画面の翻訳…。た とえば、ウェブ上にある「翻訳者ディレクトリ」というサイトを見るといい。そこに、色々な翻訳者の募集が掲示されている。だが、そこにはこう書いてある。 「経済の翻訳」「金融の翻訳」「医療機器の翻訳」…。英文学科の学生さんに尋ねる。そこに書かれた英語を本当に理解できるのか?日本語で読んでさえ分から ないものは、外国語で読んだって分かるわけはない。なぜなら、知識がないのだから何を言っているのかチンプンカンプンになる。

 「英語を話す」「英語を書く」「英語を聞く」「英語を読む」といった言葉をよく聞くが、それが大きな間違いである。正しくは、「英語で話す」「英語で書く」「英語で聞く」「英語で読む」である。つねに「何を」が求められるのだ。

 そこで、「将来は英語を生かした職業に」と考えている英文学科の学生さんは、必ずその「何」の知識を磨いてほしい。何でもいいのだ。TVゲームだって、 ボードゲームだって、フルーツだって、酒だって、とにかく好きなものを1つ得ておくことだ。好きなら、結果的に必ず「専門」になっていく。そしてそれは、 必ずや職業に結びつく。

 英語はすべての学部で学ばれているもの。英文学科以外の人間は専門知識がある。あとは英語を磨くだけ。逆に、英文学科の人間は英語の細かなニュアンスま で学んでいく(いかねばならない。でなければ他学部の学生さんとさして変わらない英語力となるのだから、「英文学科出ました」というのが恥ずかしくなるは ず)。あとは、自分で、教養科目で、あるいはどこか他学部の授業に潜って、専門性を磨くべし。

 でなければ、「英語を生かした職業」なんてつけないし、ついた人は実際にいない。事実、僕の知人の翻訳者仲間は、心理学科や工学科など、ほとんど英文学科以外の出身である。