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ノマド・スタイル(起業)

1. ノマド・スタイル(起業)の概要と英語について

 

・左の「ノマド・スタイル(起業)に関する映像を見る」をご覧ください。

・合わせて「Web運営・管理サービス」の動画もご覧ください。

 

Web運営・管理サービスの職務で掲載した企業の社長さんにインタビューした。

 

ノマドという言葉をご存知だろうか? 「遊牧民」という意味であるが、このノマド的な生き方を資本主義社会に生きる人々に実践思想として最初に提唱したのは、フランスの思想家であるドゥルーズとガタリである。いまから40年ほど前のことである。

 

ノマド的な生き方とは、定住型の生き方の対極に位置するものである。定住型とは、一つの家に住み、仕事場を往復し、その家から離れない生き方である。要するに、ほとんどの私たちの生き方である。転勤族であっても、一つの家に定住する限りは、定住型である。一定の地域で生き続ける限り、そこの文化や常識に染まって人は生きる。一方、ノマドは遊牧民であり、一定の場所にとどまって生活をするわけではない。常に場所を移動しながら生きている。このとき、常に、自分を覆いくるめる常識や文化は刷新され続ける。つまり、自分が常に生まれ変わり続けていく、生々流転する生である。

 

なお、定住型の生き方にある人々は、大方、ヒエラルキーの社会に生きている。簡単に言えば、色々な意味で上の位置に立つ者の意見を下の者が受けて生きているし、それで生活や仕事などあらゆる生活面が成立している、ということである。地域であれば、年長者から年少者へである。会社で言えば、組織上の上の者から下の者へ、ということであるし、仕事で言えば、大企業から中小零細企業へである。そうした社会では、「どこに所属するのか」という、「所属」がもっともモノを言う。「○○という会社」、「○○という地位」、「○○大学出身」、「○○歳代」、「○○という土地に住んでいる」等々、自分がどこに所属しているかが全てになる。言い換えれば、アイデンティティがすべての社会である。

 

一方、ノマドの生き方にある人々は、そうした上下の地位的関係ではなく、横の関係の中に生きる。常にあちこちを移動する場合、繋がりは一定の組織内における上下関係に依存するのではなく、信頼のおける人々同士になる。そこには、一定の組織などない。自由に、そして、広がりをもって人が繋がっていく。こうした横のつながりを「リゾーム」と言う。土の中にあるじゃがいもを考えてくれればよい。ここでは、「所属」などモノを言わない。「行動」がモノを言う。「行動」が全てを語る。もっと言えば、「人」そのものがモノを言う。(余談であるが、所属か行動かについては、拙論「ヘンリー・ミラーの文学を『貧者』の文学と捉えるとき―アイデンティティ批判とミラー文学の解釈のためにー」『デルタ』7号 pp.1-22を参照して頂きたい。)

 

ノマド的な生き方は、上下関係のしがらみに陥らず、よって、自分を発揮し、等身大の自分で生きられる生き方である。良い人は良い、ダメな人はダメという関係で結ばれていく。人、それ自体に価値が置かれるし、正直者が報われる社会である。上の地位にあるから従う、などという関係はないのである。

 

また、好きな時に好きな所に行って生きられる。世界中を移動しながら生きていける。

 

こうしたことを口だけで唱えた学者はかつて、ニューアカと呼ばれた時代に多くいたが、ご本人たちがノマドを「実行」できなかったので、彼らの言葉を聞いていた者たちはしらけてしまった。当時の学者さんたちは食っていけないとでも思ったのだろうか。もっとも、当時のノマドの主張は、仕事を転々とするという意味も含まれていた。現実的に、それは理想論に過ぎる。かつての「護送船団方式」をやめ、国が経済を自由にさせ、何が起ころうと自己責任の名のもとに国は関与せぬという今の世の中、働かないノマドは行き倒れる。ノマドとしてちゃんと生活を営んでいくには仕事がいるが、それをいまやコンピューターが実現してくれる。コンピューターが必須である限り、ニューアカの当時はまだコンピューターが今ほど発達していなかったという事情もあり、お題目に終わったのだろう。でも、いまや、コンピューターのおかげで、ノマド・スタイルで生きる人は現れている。

 

ノマドとは本来、資本主義の機械となって生きる生き方の推奨ではない。そうではなく、金が価値を帯びない世界の創出のためにある。金のために人間性を殺して生きる社会を脱し、金より人が尊重され、人が人間性を取り戻して生きる社会のことである。信頼関係で結ばれるリゾーム的繋がりは、金など必要ない。相手からAのことをしてもらったら、それに見合うことをしてあげる。これによって、金を排除した、しかし、豊かな社会が実現していく。金を稼いでも、税金をたくさんとられる。その税金はどんどん重くなっていく。だから、もっと働かねばならない。睡眠を削って、そして、身も心もクタクタになって。しかし、人の価値に税金はかからない。人それ自体が人に貢献するのだから。そして、この動きは、少なくとも大阪地域ではすでに出ているという(本サイト動画にご出演下さった「給与処理専門家」の方よりご示唆を頂きました)。

 

いま、資本主義は行き詰まりを見せている。環境にも悪い。働けど働けど、豊かにならず、逆に人々はヘトヘトになっている。だからこそ、ここへきて、価値観やライフスタイル、働き方が大きく変わりつつある。その端緒が、ノマド的生き方である。

 

ノマド的ライフスタイルを実現している人は、独身の人が多い傾向にあるが、インタビューに応じていただいた方は、それを家族単位で行っている。詳しくは、インタビューをご覧いただきたい。人間が人間を取り戻して生きている素晴らしい生き方をご覧いただきたい。メディアでも多く紹介されているが、ここでもノマド・スタイルについて概論していただいた。

 

ところで、ノマドはあちこちを移動し、人と人が結びついていく生き方であるので、もっとも大切なものの一つは言語となる。世界中を移動しながら生きていくのなら、もちろん、英語力は必須である。また、日本国内を移動して生きていくにしても、いまや国内には多くの外国人がいる。インタビューにあるように、北海道のニセコなど、めちゃくちゃたくさんの外国人が住んでいる。だから、英語が必要になる。人間として楽な生き方をするために英語が必要になる。「Web運営」の方のインタビューで「生活するには英語が絶対に要る」と言っておられるのは、そのためである。

 

最後に、ノマド・スタイルで生きるには、大企業では難しいだろう。実際、大阪地域での動きを上に書いたが、起業した方々がそうした楽しく豊かな生活をしている。グローバル資本主義の中、儲けが出ないと言って賃金カットや超過労働を行いざるを得ない大企業と、資本主義がどのような状態であれノマド的に豊かに生きる中小零細企業。我々は何のために生まれてきたのだろうか。それを考えるとき、人は様々な選択肢ができるはず。ただし、ノマドには英語が必須である。そして、組織に属することが美徳なのではなく、自分で全てを切り開いていく情熱的な生が求められる。


(本ページは科研費(課題番号21520608)の助成を受けたものである。)